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電車の中で落し物を拾うと [日記・雑感]

朝の通勤電車で、いつもの時刻にいつもの車両に乗るとだいたい座れる。
他の人と争う必要もなく、この日も悠々と座ろうとした。
しかしその席の窓のふちに、
MP3プレイヤーがぽつねんと座っているではないか。

ヘッドフォンもストラップも何もくっついていない、本体だけだ。
ブルーの小さな本体に、小さなボタン類と小さな液晶画面。
詳しくないが、たぶんそんな高価なものではない。
ヘッドフォンから抜けて落ちたのを、誰かが見つけてここに置いた、とかだろうか。

このまま放っておくと、終点まで行って車掌さんに回収されるだろうか。
それならいいが、ひょっとしたら心無い人に盗まれるかもしれない。
そう思うと落ち着かなくなってきたので、いつも降りる駅で届け出ることにした。
本体をつまみ上げ、胸ポケットに入れた瞬間ー

ざ わ ・・・

毛が逆立つような感じがした。
いくつもの目がこっちを見ている。
目の持ち主たちをチラチラ見ると、
(あのオヤジ、忘れ物をパクリやがった)
という嫌な感じがありありと出ていた、気がした。

降りるまでの間、さらに落ち着かない気分で座っていた。
(なんなんだこいつら! 何もしないくせに!)
こっちを見るだけで何も言ってこないのも、さらに嫌な感じだ。
(こういう奴らが、自分のSNSに感想を書いて「◯◯絶対反対、猛抗議したー」とか言うんだきっと)
最近、解説はするが解決には関わろうとしない人が多いとよく感じる。

いつもの駅で降り、駅員さんにMP3プレイヤーを渡すと、とても感謝された。
尋ねられたので、何時何分発、どの駅で見つけたかを伝える。
これで、落とした時間帯と落とした区間がわかり、
落とし主が現れた時に特定しやすくなるはずだ。

「あとですね、落とし主の方が来られなかった場合、お客様に権利が…」
「いや、いいですいいです」

そう言うと駅員さんはさらに嬉しそうになり、丁重にお礼を言われた。
おかげで最悪だった気分がずいぶん良くなった。

家に帰って妻にその話をすると、
「どれだけ落し物を届ける人が少ないかわかるね」
と言った。
本当にその通りなのだろう。
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